S1000RRはM1000RRと多くの共通点を持ち、詳しくない人がパッと見た程度ではカラーリングの違いくらいしかわからないかもしれない。もちろんM1000RRの方が専用のパーツがついていたり、出力が向上していたりと、S1000RRの上位車種となる訳だが、オプションで限りなくM1000RR仕様に近づけることは可能だ。今回は実際にS1000RRをM1000RR仕様に近づけた場合いくらくらいかかって、何を妥協しなければいけないのかをいていきたい。
S1000RRの標準装備
S1000RRは現在2種類のパッケージを選ぶことができ、HPカラーのみに適用されるMパッケージと通常のレースパッケージだ。ここでのMパッケージとはM1000RRと同じという意味ではなく、少しだけMパーツが使われている程度である。
HPカラーのMパッケージは2,851,000円
ブラックストームメタリックのレーシングパッケージが2,599,000円
となっている。そのほかホッケンハイムシルバーというカラーも選択可能だが、これもレースパッケージとなっており、カラーのオプション料金として20,000円に設定されている。
Mパッケージとレースパッケージ
S1000RR Mパッケージとレースパッケージは以下のようになっており、()内はレースパッケージの内容となる。省略するため、以下のリストではMパッケージを「M」、レースパッケージを「RP」と呼称する。
- カーボンホイール(RPの場合鍛造ホイール)
- ライディングモードPRO
- Mスポーツシート(Mのみ標準)
- Mライトウェイトバッテリー
- HPモータースポーツカラー(Mのカラー)
- 電子制御式サスペンション
- グリップヒーター
- クルーズコントロール
- Mエンデュラスチェーン
- DTC
- ABS PRO
- インテグラルABS
- レースABS
- シフトカム(VTECのようなもの)
- シフトアシストPRO
- その他快適装備
以上のように、違いはカラーリングは置いておいて、カーボンホイールの有無、Mスポーツシートの有無ということになる。たった2つの違いなのだが、ここに252,000円の違いがある。
Mスポーツシートのオプション価格は52,140円
M鍛造ホイールのオプション価格が551,738円
カーボンホイールのオプション価格が808,038円
となっている。M鍛造ホイールとカーボンホイールはどちらか一方しか履かせられないので、その差額を計算すると、256,300円となり、Mスポーツシートの52,140円と合計すると、308,440円となる。Mパッケージとの価格差が252,000円だったので、56,440円お得という計算ができる。
しかし、レースパッケージにて、カーボンホイールを選択したからと言って、M鍛造ホイールの価格を引いてくれる訳ではないので、単純にカーボンホイール代の808,038円がかかってくる。(はず) そうなるとMスポーツシートの52,140円をプラスして860,178円となる。色はどうしても黒がいいが、仕様はMパッケージと同じにしたいというこだわりの強い人は、車体金額と合計して、3,459,178円もの支払いが必要となり、Mパッケージと比べて608,178円も足が出てしまう。
3,459,178円という数字を見て、あれと思った人もいるかも知れないが、この金額は、M1000RRのMモータースポーツの3,783,000円とだいぶ肉薄しているといえる。そしていよいよ本題だが、S1000RRをM1000RR仕様にしたらどうなるのかシュミレーションして見よう。
M1000RRとの違い
さていよいよS1000RRとM1000RRの比較だが、冒頭で話した通り、この二つの車体は共通している部分が多く、S1000RRで搭載されている機能に関してはほぼM1000RRにも搭載されている。その上でM1000RRにはさらに豪華な装備が搭載されている訳だがこれもオプションでカバーできる部分は多い。それでは詳しく見ていく。
下記のリストはMコンペティションパッケージの内容となっている。価格が記載しているものに関してはS1000RRでもオプションで設定することが可能だ。またMスポーツシートの記載はないがM1000RRには当然標準装備となっている。
- アルマイト加工済みスイングアーム (選択不可)
- Mエンデュラスチェーン (49,566円 S1000RR共通)
- M GPSラップトリガーインターフェイス (選択不可)
- パッセンジャーキット (S1000RR標準)
- リアセクションカバー (28,072円)
- Mカーボンフロントフェンダー (71,610円)
- Mカーボンリアフェンダー (125,246円チェーンガード含む)
- Mカーボンチェーンガード (同上)
- Mカーボンサイドフェアリング (146,608円)
- Mカーボンタンクカバー (208,780円)
- Mカーボンスプロケットカバー (60,852円)
- Mエンジンプロテクター(左) (44,110円左右合わせて)
- Mエンジンプロテクター(右) (同上)
- Mクラッチレバー (36,190円)
- Mブレーキレバー (36,190円)
- Mブレーキレバープロテクター (28,710円)
- Mライダーフットレストアッセンブリー (135,080円)
- Mシャシーキット (選択不可)
- Mウィングレット (選択不可)
- Mブレーキキャリパー (75,020円リアのみ)
- Mバッテリー (36,740円 S1000RR共通)
- カーボンホイール (808,038円)
- チタンエキゾーストシステム (選択不可)
- ギアシフトアシスタントプロ (S1000RR共通)
- グリップヒーター (S1000RR共通)
- クルーズコントロール (S1000RR共通)
- USBチャージングインターフェイス (S1000RR共通)
- ETC2.0 (S1000RR共通)
- 3年保証 (S1000RR共通)
これを踏まえて細かく計算していこうと思う。
まずはレースパッケージ。上記のリストで「S1000RR共通」と書かれたもの以外では、カーボンホイールと、Mスポーツシートが追加となる。これら全てを足していくと、その金額1,856,646円。レースパッケージの本体価格が2,599,000円であるため、合計が4,455,646円となり、M1000RR Mコンペティションパッケージの428万円を越える。その上、マフラーやエンジン出力、ウィングなどM1000RR専用の装備はつかないので逆にM1000RRがお買い得にさえ思えてくる。
次にS1000RRのMパッケージで考えてみる。Mパッケージはカーボンホイールと、Mスポーツシートが標準装備となるためこの金額ははずす。そうするとオプション合計は996,468円となり、本体価格である2,851,000円と足すと3,847,468円になる。M1000RR Mモータースポーツと比較してS1000RRのM1000RR仕様の方が64,468円高いという結果になった。とはいえほぼ同額といえるだろう。Mコンペティションパッケージに比べて432,532円安いということもわかった。
ちなみにS1000RRをM1000RR Mモータースポーツ仕様にすることはできない。というのも、S1000RRのMパッケージの内容で、ウィングやらエンジン特性やらチタンマフラーつけたものが、Mモータースポーツ仕様に近いからだ。要するにS1000RRのボディにMの専用パーツをつけ、パワーアップしたのがM1000RR Mモータースポーツということになる。
S1000RRが勝る点はないのか
過去の記事でも書いているが、全てにおいて、M1000RRが勝っている訳ではない。そう、DDCの存在だ。DDCとはダイナミックダンピングコントロールの略で、要するに電子制御サスペンションだ。M1000RRにはこのサスが搭載されておらず常時信じられないくらい足が硬い。その点S1000RRは街乗りからサーキットまで幅広い使用を考えられており、好きなタイミンぐでサスの硬さを変更出来る。この部分をどう考慮するかも重要だ。
どう選択するか
ここまで計算して思うことはこんな変な買い方はしないだろうということ笑 とはいえ一つの解を出してみようと思う。まずそれぞれの金額を並べてみるが
- S1000RR レースパッケージ 2,599,000円
- S1000RR Mパッケージ 2,851,000円
- M1000RR Mモータースポーツ 3,783,000円
- S1000RR Mパッケージ M1000仕様 3,847,468円
- M1000RR Mコンペティションパッケージ 4,280,000円
- S1000RR レースパッケージM1000仕様 4,455,646円
- M1000RR MモータースポーツMコンペ仕様 4,754,014円(過去記事より)
という感じに並んだ。
ここからは私の独断と偏見でどれが買いか決めていくが、M1000RRに全く興味が湧かない人はS1000RR レースパッケージをお勧めしたい。カーボンホイールがつかないのは残念だが、価格を一番抑えることができ、DDCもついている。ほとんどM1000RRと変わらな車体は十分楽しいバイクといえるのではないだろうか。
カーボンパーツは必要ないが、パワーアップした車体に乗りたい方はM1000RR Mモータースポーツだ。最高出力の向上や、ウィング、チタンマフラーなど専用の豪華装備がつきながらも価格は抑えられる。問題は日本国内で購入できるかだが、この辺はディーラーに問い合わせて見てもらいたい。
専用装備には必要性を感じず、M1000RRのボディがどうしても嫌いだけどカーボンパーツで豪華に飾りたい人はS1000RRレースパッケージのてんこ盛り仕様。S1000RR Mパッケージからスタートした方がいくらか安いが、HPカラーはM1000RRカラーと似ているのでブラックストームメタリックやホッケンハイムシルバーになるかと。ある意味M1000RRを超える最高級仕様。
街乗りからサーキットまでこなすから乗り心地が良い方がいい。だけどカーボン武装はしたいという人は、S1000RR Mパッケージ てんこ盛り仕様。DDCが搭載されているので走る場所を選ばないし、Mパッケージは高額なカーボンホイールが標準でついているのでオプション金額も抑えられる。しかしこの選択、色々計算していて一番現実的かもしれないと思っている。M1000RRのMモータースポーツと金額が近く、性能をとるならM1000RR Mモータースポーツ、快適性と見た目を取るならS1000RRてんこ盛り選択。これはこれでアリな選択なのかも知れない。あとはHPカラーを好きなれるかどうか。
素直に一番性能が高くて、コスパがいいのを買うという人はM1000RR Mコンペティションパッケージということになる。
まとめると、
- S1000RR レースパッケージ 安い車体が良い ⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
- S1000RR Mパッケージ カーボンホイールがお得 ⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
- M1000RR Mモータースポーツ 性能のみ欲しい人 ⭐︎⭐︎⭐︎
- S1000RR Mパッケージ M1000仕様 カーボンとDDCが欲しい人 ⭐︎⭐︎⭐︎
- M1000RR Mコンペティションパッケージ 性能、コスパ最強 ⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
- S1000RR レースパッケージM1000仕様 HPカラーが嫌いだけどカーボン武装したい人 ⭐︎
- M1000RR MモータースポーツMコンペ仕様 Mコンペ買いなさい ⭐︎
と言った結果になった。
最後に
ちょっとありえない計算をやって見た訳だが、意外にも、DDCとカーボンの選択ということでS1000RR MパッケージのM1000仕様というのがありかもしれないということがわかった。とはいえ、よほどこだわりが無い限りはS1000RRの2種類どちらかか、M1000RR Mコンペティションパッケージを購入した方が良いと思う。
また注意して欲しいのが、中古でS1000RRを購入する場合。現在、新車のS1000RRはホームページのシミュレーションでDDC付きしか選択できないが、過去にはDDCなしという個体も存在していた。現在でも新車でDDC無しというものを購入できるのかは私もわからないが、中古をベースにカーボン装備を取り付けたりするようであればDDCの有無を確認してから購入することをお勧めする。
でもS1000RRのブラックストームメタリックにフルカーボンを搭載し、ロゴやカラーリングを無くして、漆黒のS1000RRなんていうものを作ったらそれはそれでクソかっこいいような気もする・・・。