今回は気になる商品であるAELLAさんから発売されている内圧コントロールバルブを体験してみました。装着された車両はRnineTで、効果はアクセルレスポンス関連がスムースになるというもの。半信半疑なアイテムとして私の中で昔から頭の中にあったのですが、果たしてその効果はいかに?
装着されたRnineT
今回体験させていただいた車両は、RnineT2021年式。
これまでAELLAさんからは2020年式までのRnineTに取り付けることができる内圧コントロールバルブが販売されていたようですが、今回2021年以降の仕様にも対応し販売が開始されたそうです。
バルブを取り付けるパイプの径が違ったようでこれまで取り付けることが不可能でした。また、これまでのRnineTはワイヤー式のアクセルだったのに対して、2021年式以降は電子スロットル。様々な部分が変更され半年以上のテストを繰り返し販売に至ったようです。
本体自体は小さく、取り付けている部分を凝視しないとわからないレベルとなっており、カスタムとしては邪魔にもならないし、主張もしないといった物。
さてどんなフィーリングを与えてくれるのか楽しみです。
クランクケース内圧コントロールバルブ
さて、このクランクケース内圧コントロールバルブですが、公式サイトでは、
- 乗りやすく高回転が楽しくなる
- マイルドなエンジンブレーキ
- 低回転からのピックアップがよくなる
などと書かれております。スリッパークラッチが搭載されていないRnineTは、どうしてもシフト操作時に大きなショックが発生するため、乗り手はそういった挙動が起きないように操作する必要が出てきますが、これを取り付ければその辺がマイルドになるという感じ。また高回転域でもスムースにエンジンが回るとのことで、街乗りからサーキットまで走りの質が向上することを謳い文句としているようです。
走行インプレッション
まず前提なのですが、そもそも私は素のRnineTをピーキーで乗りにくいと思っていません。M1000RRのようにラフに操作すればギクシャクする可能性はありますが、それ相応の操作を行いますので、乗りにくくて困っているという感覚はありません。どちらかというと常時優しく運転しているといった感じでしょうか。
まず乗り出して最初の感想は
「正直よくわからない」
といった感じ。というのもこの時も上記で書いた通りそれほどラフに操作していないので、車体が前後に振られるようなショックが発生していないからです。
そこでもう少しラフに操作してみることに。ギアを低くし、雑にクラッチを繋いで見たり、アクセルをガバッと開けてみたりと色々試してみます。すると、
「確かに若干マイルドになっている」
という感覚は得られました。しかし意図的に雑な操作をして得られるフィーリングなので通常状態での得られる恩恵は少なく、操作をミスしたときに助かるといった感じかとも思いました。
気になった部分
上記に書いた効果のリストの中に、「低回転からのピックアップがよくなる」というものがあります。低回転からの扱いも楽になるものだろうと考えていましたが、私の感覚では
「トルクが細くなった」
ような気がしました。私はこの日、1時間くらい試乗していたのですが、スタートから試乗終了まで度々ノッキング及びエンストしそうになるという状態が多発しました。これは私の乗り方によるものでもあると思いますが、私はどちらかと言うとRnineTを乗るときに高めのギアを選択する傾向にあります。交差点でも3速を使うことがあったり、4速で走れそうな道でも5速6速を使用します。高いギアでノッキング現象はありませんんでしたが、交差点などを高いギアで抜けようとするとエンスト寸前になり、慌ててクラッチを握るという操作を何度も行いました。
これを「トルクが細くなった?」という言葉で表現しましたが、別の言い方をすると、
「エンジンが粘らなくなった」
という感覚がしっくりきました。(それが低トルク化によるものだと思いますが) 自分の車両なら、高いギアでもドドドドと粘りながらパルス感のある加速をしていくのですが、粘らずスッと力が抜けてしまうような感覚。なのでしっかりと適正なギアまで落としていかないと非常に走りにくいという状態だったわけですね。
営業マン曰く
試乗を終え、トルクについて話を聞いてみると、
「それはないはず」
とのことでした。クランクケースの内圧適正なものにしているためトルクが増えることはあっても減るということはないし、テスト時でもそんなことはなかったと言われておりました。
ただ、「電子スロットル化になったことでコンピューターで何か制御が入っているのかもしれない」という言葉も口にしており、何が原因かということはわかりませんでした。
もし内圧コントロールバルブが原因ではないということになると、考えられる要因としては、
- バイク本体の個体差
- 試乗車ということで乗り方が違うことによる燃料噴射マッピングの違い
- 私の操作の差
- やはり電子スロットルと相性が悪い?
ということが挙げられそうです。バイク本体の個体差に関しては年式や作られた時期の違いなどによって若干の差があるかもしれません。また、走行距離も私の車体とは違うのでその辺もあるかもしれません。
燃料噴射に関しては、FIがマシンの使い方で学習していくと思いますのでその違いによって高いギアでは粘りにくいセッティングになっていたとか?
私の操作感としてはあまり変化させたつもりはありませんでしたが、この試乗車にはカスタムハンドルや、ステップが取り付けられていたのでその辺の違いによる影響か?
電子スロットルとの相性が悪いか?
などなど考えましたが、私個人としては、内圧コントロールバルブがそういった症状を引き起こしたという結論を出して今回の試乗は終了としました。
総評
AELLA製 クランク内圧コントロールバルブの個人的な感想は、
「雑な操作をした際の挙動はわずかにマイルドになるが、低速時に粘らないということを考えると、総合的にマイナスになる」
という感じでした。やはり低速で粘らなくなるということ。この原因が上記で書いた通り車体の問題なのかバルブの問題なのかは特定できていませんが、単純にあの試乗車は「乗りにくかった」という感想。自分のバイクに内圧コントロールバルブをつけたらどういった挙動になるかは実際にやってみないとわかりませんが、もしかしたら試乗車のようなフィーリングになるかもしれないと思うと試す勇気はありませんでした。
もちろん、自分の車両に取り付けても低トルク化が起きない可能性も大いにあります。ただ、もしこれが3,000円のパーツなら試してみてもいいと思えますが、30,000円を超えるパーツであれば、脱着するのも面倒ですし、使わなかったとした場合別の何かに使えるわけではありません。
サーキット走行などをするのであれば良いかもしれませんが、基本は街乗りしかしないバイクなので、低トルク化は問題ありです。そういったリスクを考えて「装着しない」という判断に至りました。
おすすめできる人
ただ、ここで注意していただきたいのはこの製品が意味のないものであるということではありません。これはあくまでもRnineTに取り付けられたクランクケース内圧コントロールバルブの話で、このバルブというアイテムは様々な車種に存在しています。別の車両によってはメリットが大きくなる可能性あります。
さらに、私の乗り方には得られる恩恵が少ないというだけであり、人によっては非常にライディングが楽になる可能性があります。もし私がお薦めするのなら
- アクセル、クラッチ、シフトチェンジなどの操作練度がまだ低く、ギクシャクした挙動がよく起きてしまう人
- RnineTの限界付近まで引き出す人(サーキットなど)
- 高いギアよりも低めのギアを多用する人
こんなところかなと思っています。今回の試乗では当たり前ですが限界付近で使用したわけではないので、サーキットなどでどういった挙動をするのかはわかりませんが、速度が高くなり、回転数が高くなればなるほど、各操作時に発生するフィードバックというものは大きくなります。それを大きく軽減できる可能性はありますし、この辺は当然AELLAさんもプロライダーを起用してテストを行なっていると思います。ですので効果はあるのではないかと思っています。
私の場合、限界で走らせることはまずありませんし、通常の走行時でもギクシャクが不快に思ったことはないので得られる恩恵が少ないと感じました。
最後に
このクランクケース内圧コントロールバルブはなかなか試す機会がないと思います。今回は運良く試乗させてもらえることになり非常にラッキーでした。またここまで色々書かせていただきましたが、あくまでも私の感覚であるということを改めてお伝えします。私以上に感度が高い人は山ほどいると思いまうし、乗り方次第では大きくメリットを感じられるといった方もたくさんいると思います。(でなければそもそも売れない) ですので、あくまでも私の感想であるということで参考にできる部分は参考にするといった感じで読んでもらえれば幸いです。
とはいえ、一言でこの製品についていうなら「過度な期待をしない」ということです。スリッパークラッチくらいの効果を期待すると、裏切られると思います。
難しいかもしれませんが、もし可能であれば試乗して見ることをお勧めしたいです。