先日石垣島に行った際、電動バイクを初めて体験しました。走行性能的なフィーリングは上々で、移動手段の一つとしては選択肢になりうる乗り物と思えました。現段階ではやはりバイクを電動化するというのはありの部分もあるし無しの部分もあると思いますので、今回はその辺の話をして行きたいと思います。
関連記事
GO SHARE gogoro2 乗ってみた感想
魅力はトルク
石垣島にてレンタルした電動バイクはgogoro2plus という車種で要するに電動スクーターです。125cc相当のバイクとなるわけですが、モーターのメリットである初期トルクが大きく、下道を走る分には十分なパワーだと感じました。剛性感や、ブレーキ性能などはかなりチープな印象を受けましたが、車種の性格のようなものなのでお金をかければよりよくなると思いますし、必要最低限とすればそれなりのものになると思います。
電気モーターを搭載した乗り物は基本的に加速性能が高く、現在では車でも電気自動車の方が加速性能が高いことがほとんどです。大型バイク相当の電気バイクも登場しており、その加速性能に関しては様々なレビュアーが評価しているようです。
航続距離と充電
電気車両の一番の問題点といえば航続距離と充電。最近の電気自動車は400キロ以上走れるものも存在しますが、gogoro2plusは約80キロ弱。(カタログ値は160キロ)感覚的には充電完了したとともにエンプティ状態といったイメージでした。
大きいバッテリーを搭載すれば航続距離は解決できますが、バイクは車と違い車体自体が小さく積載スペースもありませんし、重量が上がれば上がるほどバイクの軽快さが失われていきます。
それから充電問題。最近では90kwhといった大容量のバッテリーを積んだ車も存在していますが、これを自宅の100Vや200Vで充電するには無理があり、100Vでは簡易計算で、75時間も時間がかかります。一度使ったら3日は乗れないなんて話になりませんので、急速充電スポットに車を持っていくわけですが、80%まで持っていくのにも30分以上かかることも。
しかしバイクの場合どうでしょうか。連続航続距離は小さいわけですが、バッテリー容量も小さくなり、100Vでも充電できなくないレベルになってきます。ガソリン式のように一気に長く乗ることはできませんが、家から近場のスーパーなどへ買い物に毎日使うといった使い方であれば寝ている間に充電して日中に使うといったことも可能です。そのため、航続距離と充電問題という点においては使い方次第ではバイクの方が適しているのかなとも思います。
GOshareの戦略
石垣島ではGOshareというサービスが運用されています。(元々台湾のサービスらしい)gogoroに搭載されているバッテリーは交換式となっており、石垣島に点在する充電ステーションに行けばバッテリー丸ごと交換することで一瞬で充電を完了させることができるシステムです。
先ほどgogoro2plusの航続距離は80キロほど言いましたが、充電ステーション間が80キロ以下になるように設置されているため、よほど変な乗り方をしない限りは電欠を起こすことはないと思います。
80キロしか走れない代わりにバッテリー自体は軽く、手で持つことが可能なので、ある一定の範囲の中を移動するための手段という意味では「バッテリー交換」という技を武器にすると、これまた電気とバイクとの相性は悪くないように感じます。
所持して楽しい乗り物か
小規模範囲においては電動バイクは悪いものではないということにし、航続距離も充電問題も100%解決できる時代が来たとします。そうなると当然ロングツーリングにも使用できるようになるわけですが、果たしてそれが楽しいかということが一番問題です。
人によってはシルキーで滑らか、振動皆無のエンジンなんかが好まれたりするわけですが、あれは音がすごいのに振動がないから好かれるのであって、振動もないけど、音もないといったエンジンがどう評価されるでしょうか。
没個性
バイクは車と違い、趣味性の高い乗り物です。バイクは車以上にエンジン本体に個性の要素が含まれており、気筒数、シリンダーの角度、冷却方式、搭載方法などこれらが変わるだけで乗り味に大きな変化があり、それを楽しむものでもあります。もちろん車も同じことがいえるのですが、多くの人にとってその部分は重要視されずどちらかといえば移動手段という位置付けが強いかと思います。
その個性の源であるエンジンが電気モーターになると、バイクの面白さというものが一気に無くなり趣味性という面から見た場合のバイクが衰退していってもおかしくありません。
ハーレーなど、ドドドドと鼓動するエンジンが楽しいのであって、もしあのフォルムで「ふいーーーん」と音を鳴らしながら走ったとしたらそれはどうなんだと思うことでしょう。
そうなるとバイクの魅力は、
- 倒れる(リーンする)
- 風を直接浴びれる
- コンパクトでどこでもスイスイ行ける
など、これくらいしかないのかもしれません。もしエンジン式のバイクの製造が禁止される時代が来たら、大型のバイクは多くの種類を減らし、ライダーと呼ばれる人種も激減するのかもしれません。
どうしたらいいのか
ではいつか来るかもしれないエンジンバイクの消滅が本当に来たとき、2輪メーカーはどうしたらいいのでしょうか。もちろん私にはわかりませんが、人々がエンジンバイクのことを忘れるまで耐えるしかないのかなとも思います。私たちのようにエンジンバイクを味わった人間からすると、大型の電気バイクに興味は持たなさそうです。今日から電気バイクオンリーの販売になったとして、今生きているライダーがある程度変わる50年くらいすれば、次の世代は電気バイクが当たり前ということになりますし、受け入れられるかもしれません。その前にバイクメーカーが無くならなければいいのですが。
あとはMotoGPのようにレースの世界は、純粋に速さを求めるので、多少は盛り上がるかもしれません。しかしそういったレースもそもそも普通の2輪が売れない状態では開催されること自体がなくなるかもしれませんね。
最後に
私が考える未来の電気バイクですが、簡単にまとめると
- 小型スクーター系は生き残れそう
- GOshareのように範囲限定なものになりそう
- 電池問題が解決しても趣味性の強い中型以上のバイクは存続できなそう
といった感じになります。とはいっても現在の価値観で考えた場合であり、今後はこういった未来を予測してバイクに新たな価値観が生まれる可能性もあります。それらはおそらく2輪業界が深く考えているだろうテーマであり、私もどういった答えを出すのかは正直楽しみでもあります。
世界の流れは電気となっていますが、今後どうなっていくのかは怖いような楽しみのような複雑な気分です。私がバイクを引退するまではもちろん、エンジン式というものは後世に残ってくれたらなぁとも思っています。